おもてなしプラットフォームで実証実験中の指紋決済。安全性は大丈夫?

旅行客とキャリーバッグ

皆さんは経済産業省が推進中の「おもてなしプラットフォーム」という事業をご存知でしょうか?2020年の東京オリンピックで増加が予想される訪日外国人に対し、あらゆる機器がインターネットにつながる「モノのインターネット(IoT)」を活用して、訪日観光客の利便性向上を図ろうという取り組みです。

おもてなしプラットフォームの目的と事例

経済産業省によると「我が国では、特に地方においてクレジットカード利用環境の整備が不十分。クレジットカードの決済比率及びセキュリティの高いIC対応比率が低いため、訪日外国人観光客からの改善を求める声が大きい」とのことです。そのため2020年までに外国人観光客が訪れる主要な商業施設、宿泊施設及び観光スポットにおいて「100%のキャッシュレス決済対応」と「100%の決済端末のIC対応」を実現する、としています。

この取り組みは、利用者である訪日観光客の意思に基づいて登録された属性情報や、各事業者・地域が収集した利用者の履歴情報の共有・活用を可能にするものです。具体的な事例の1つとして、株式会社Liquidによって開発された「ゆびクーポン」という指紋による電子決済があり、すでに地域限定で実証実験も進められています。

《ゆびクーポン》とは?

生体指紋登録で貴重品を持たずにスイスイお買い物が出来ちゃうサービスです♪ お財布もスマホもクレジットカードも要らないので、あ、お財布忘れた!そんな時でも決済できちゃうすぐれもの。なんです。財布も小銭も出す必要がないのでスイスイっとレジでお会計出来ちゃいます☆

ゆびクーポン公式サイト:http://www.areaconcier.net/yugawara/

おもてなしプラットフォーム:http://miqip-info.jp/business/index.html

神奈川県:湯河原温泉エリア

湯河原温泉の名物がずらり!

湯河原温泉観光協会ホームページより

2016年5月から箱根・湯河原温泉・鎌倉エリアでは「生体指紋認証」システムによるクーポンを活用した「ゆびクーポンプロジェクト」の実証実験が行われています。じゃらん・楽天トラベル・るるぶで「ゆびクーポン」を使った特典付きの旅行が予約でき、利用者は旅館にチェックインする時に生体認証による登録を行います。“ゆび”には宿泊施設が発行するクーポンが登録され、お店で買い物をする際に登録した指を端末にかざして決済完了です。

湯河原温泉観光協会:http://www.yugawara.or.jp/news/details.php?log=1469577806

福岡県:川端商店街エリア

商店街のアーケードに展示された山笠

上川端商店街ホームページより

訪日外国人旅行者等の受入環境の向上や、回遊・消費促進による地域産業の振興に取り組んでいる福岡市でも、2016年12月から川端商店街周辺で湯河原温泉と同様の実証実験「Touch & Pay FUKUOKA」を開始しています。

利用者は空港や宿泊施設等で、指紋のほかパスポートやクレジットカード情報などを登録します。これにより指先ひとつで宿泊施設のチェックインや買い物の決済を行うことができます。このサービスを利用する訪日外国人に対しては、指紋認証による決済で利用できる「ゆびクーポン」を付与し、実証エリアにおける回遊と消費の促進を図る、とのことです。

福岡市プレスリリース:http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/55721/1/shimonninsyou.pdf

指紋認証ってどんなもの?

指紋認証は手指の指紋を使って個人を識別する技術で、人間の身体的特徴(生体器官)や行動的特徴(癖)の情報を用いて行うバイオメトリクス(生体認証)の1つです。いろいろなセキュリティに利用されており、携帯電話にも使われています。例えばiPhone5s以降に搭載されているTouch IDもその1つ。普段から何気なく利用している方も多いのではないでしょうか。

指紋認証はパスワードや物による認証と違い、情報漏えいや盗難の可能性が少ないと言えます。また、本人がパスワードを忘れたり鍵を無くしたりして、ロックが外せなくなるリスクもありません。指紋は遺伝子が完全に一致する一卵性双生児でも異なることが確認されており、加齢による変化もないことから、本人だけしか使えない有効な認証手段の1つとされています。

安全性に問題はないのか?

ピースサインで自撮りする若い女性の笑顔
先日、「ピースして写真に写ると指紋が盗まれる」といった報道がありました。これは“指紋の盗撮を防止する技術”を開発した国立情報学研究所の越前功教授が注意を促したものです。しかし越前教授は1月11日に放送された「羽鳥慎一モーニングショー」のインタビューで、画像から指紋を読み取るためには

  1. 明るい太陽光の下で
  2. 焦点がしっかり合っており
  3. 高い解像度で撮影されている

といった一定の条件を満たす必要があり、今すぐ対策をしなければならない訳ではないとコメントしています。また「ゆびクーポン」を開発したLiquid Japanの保科秀之代表も、「指紋だけでなく静脈や汗腺なども照合しているため、慌てる必要はない」と説明しており、同番組では過去にネット上に掲載した写真を削除するような対策は必要ないと報じました。

今すぐ何らかの対処をする必要はないとのことですが、今後は指紋の情報も盗難に遭う可能性があるという事を認識し、安易にSNSなどに高い画質で写真を投稿するのは避けた方が良さそうです。

羽鳥慎一モーニングショー:https://jcc.jp/news/11784716/

まとめ

国が推し進める指紋認証を利用した電子決済はとても便利だと思います。全国に普及すれば財布を持ち歩かずに観光ができ、旅行者の利便性は格段に向上するでしょう。また開発会社は指紋以外の情報も加味して照合しており、指紋の情報だけでセキュリティが破られることはないと説明しています。しかし、画像から指紋情報が流出する危険性があると専門家が指摘している以上、不安がないとは言えません。

例えば多くの銀行ATMには静脈による生体認証が取り入れられていますが、ATMではICキャッシュカードと静脈認証をセットにすることで、セキュリティを強化しているそうです。指紋決済において利便性と安全性のバランスをどう取っていくのか?また利用者に対して、安全な運用をどのように啓蒙していくのか?…全国で普及させるためには、まだまだ課題がありそうです。