経産省が発表した”FinTechビジョン”。これから日本の社会はどうなる?

フィンテックのイメージ

2017年5月8日、経済産業省はFinTech(フィンテック)に関する初めての総合的な報告・提言として”FinTechビジョン”を取りまとめたと発表しました。

経済産業省は2015年10月から「産業・金融・IT融合に関する研究会」(FinTech研究会)や「FinTechの課題と今後の方向性に関する検討会合」(FinTech検討会合)を開催し、FinTech に関わる企業経営者や実務家、研究機関、学界、経済団体、⽇本銀⾏、⾦融庁等関係機関とともに目指すべき姿や政策の方向性などについて検討を行っています。

一年半以上もの時間をかけて作成された”FinTechビジョン”。この中で描かれるこれからの日本が目指す社会とは一体どんなものなのでしょうか?今回は”FinTechビジョン”の概要をお伝えします。

今、世界で何が起きている?

19世紀イギリスで蒸気機関が発明され、これまで人の手で行われていた作業が機械化されました。これを「第1次産業革命」と言います。また20世紀にかけて鉄鋼の分野で技術革新が進み、石油や電力を使って大量生産ができるようになったことを「第2次産業革命」と言い、コンピューターの発達によって機械を自動的に動かせるようになった現在は「第3次産業革命」と言われているそうです。

そして、これから訪れると予想されているのが「第4次産業革命」です。IoT(Internet of Things)であらゆるものがインターネットでつながり、集められたビッグデータをAI(人工知能)が解析して機械が自ら考え、動くようになる…言うなれば「機械の自律化」というところでしょうか。

”FinTechビジョン”では第4次産業革命の動きが金融にも押し寄せており、「爆発的に普及したスマートフォンやタブレット端末等を通じて、これまでにない⾰新的な⾦融サービスが⽣み出される動きを捉えようとする⾔葉」としてFinTechを定義しています。その上で、FinTechによって「あらゆる経済活動の裏にある『お⾦』のかたちが変わり、その流れが変わり、信⽤やリスクの捉え⽅が変わり、それらを⽀える担い⼿が変わる」としています。

<参考>ものづくりニュース by aperza「1分で分かる第4次産業革命その① 第4次、4.0って何?

決済サービス 無料相談はこちら

FinTechが変える「お金」の姿

日本のキャッシュレス決済比率(2015)はわずか18%

日本ではまだまだ現金による決済が主流ですが、世界的にはキャッシュレス比率が急速に増えており、中国や韓国は既に50%を超えています。硬貨や紙幣等の現⾦(キャッシュ)からクレジットカードや電⼦マネー等へ移行するキャッシュレス化は、スマートフォンなどのモバイル端末による決済や送金の急増にも色濃く表れていると言えるでしょう。

”FinTechビジョン”でも「全ての『お⾦』が、電⼦情報となってネットワークを瞬時に移動し、計算され、記録されることで、あらゆる経済取引が⾏われる瞬間に⽴ち会い、寄り添うことができるようになってきた」と説明しています。

決済サービス 無料相談はこちら

”FinTechビジョン”が目標としている社会

個⼈の⽣活(家計)が劇的に変わる

”FinTechビジョン”が描く未来の社会…それはモバイル決済や割り勘アプリ、電子マネー等により、キャッシュレス化が進むことで小銭のやり取りや送金コストが削減でき、利便性が向上するだけに留まりません。「キャッシュレス化することで自らのお金の動きが自動的に記録され、簡単に管理できるようになれば、家計の管理や貯蓄、個人ローンなどをもっと合理的に選べるようになる」と説明しています。

日々のお金の動きがデータ化されると、⾃らの資産状況や将来必要となる⽀出、運⽤に回せる資産等の「⾒える化」ができるようになります。例えば既にサービス提供がスタートしているロボ・アドバイザーの資産運⽤サービスは、投資を始める際の⾦銭⾯や知識⾯での敷居を下げ、それぞれのライフ・プランやリスクに対する考え方に応じた最適な資産運⽤を可能にしています。

欧米などに比べると、日本の金融資産は現金や預金に偏っています。しかし”FinTechビジョン”では、現在の超低金利・マイナス金利の経済環境や高齢化社会における個人の人生設計上、中長期的な資産運用・資産形成を行うことは大事な課題であると位置づけており、個人資金を資本市場に流入させて長期投資の厚みを増すことも政策課題としています。FinTechは「個人投資を促進する足掛かりにもなる」と考えてられているようです。

企業の収益⼒が劇的に上がる

企業の成長イメージ

現在、日本企業が直面する大きな課題は人手や人材の不足です。少子高齢化による人口減少は今後さらに加速すると予想されます。また経営人材や必要な技能を持った人を確保できないという問題も深刻ですし、経営者の高齢化も進んでいます。

”FinTechビジョン”では、「企業が⽣産性を⾶躍的に⾼めるためには、バックオフィス業務等を徹底的に効率化し、経営者⾃⾝も含む希少な⼈的資源が価値を⽣み出す仕事に集中できる体制を作ることが重要である。」としています。

例えばクラウド会計ソフト等のITツールは、中小企業の財務・経理の自動化、さらにはその効率化やリアルタイム管理を実現します。クラウド業務システムは、導入が完了すればその後のアップデートがクラウド側で対応されるので、少ない費用で大企業と同様のシステムを利用することができます。これは特に地域経済を支える中小企業にとってのメリットが大きいと考えられます。

こういったツールを利用することで、キャッシュフローがリアルタイムで「見える化」されれば、資金管理の土台が整い、資金繰りの指標ともなる「キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC・仕入れから販売に伴う現金回収までの日数のこと。)」の最適化も可能になることでしょう。IoTを活用して在庫を自動で把握できるようになれば、納品と同時の支払いなども可能になることが予想されます。バックオフィス業務が圧縮されて資金繰りが改善されれば、成長に向けた投資も可能になり、中小企業が飛躍的な成長を遂げる可能性も高まります。

決済サービス 無料相談はこちら

FinTech 社会を実現するための課題と政策対応

FinTech社会の実現に向けた政策指標の設定(図解)

<出典>経済産業省:FinTechビジョンについて (補足資料)より

”FinTechビジョン”に描かれる社会の姿は、「官⺠のあらゆる資源を効果的・効率的に活⽤することでようやく実現を⽬指すことができるシナリオである。」とされており、「⽇本において⾰新的なFinTech が次々に⽣まれ、それを担う起業家精神を持った⼈々や企業が世界中から集まり活躍するダイナミズムを⽣み出すための課題と⽅策」として以下の4つを掲げています。

①FinTech の前提条件となるデータ環境を整えキャッシュレス社会を実現すること

②「お⾦」の流れに関わる全ての取引をデジタルで完結すること

③そのような基盤の上でFinTech による企業の経営⼒・⽣産性改⾰を促進すること

④FinTech によるイノベーションを次々に⽣み出す環境づくりをすること

キャッシュレス社会の実現のために政府が取り組むべき課題はたくさんありますが、既に法改正などによる環境作りが進められています。例えば2016年12月の改正割賦販売法の施行により、ユーザーだけでなくクレジットカード加盟店にとっても、不便で負担になっていた利用明細の書面による交付義務が緩和されています。また法人のインターネットバンキング利用の促進施策や、IT導入補助金制度を設けることによる中小企業の生産性向上への取り組みも活発化しています。

<参考>経済産業省プレスリリース
FinTech(フィンテック)に関する初めての総合的な報告・提言「FinTechビジョン」を取りまとめました
FinTechビジョン(FinTechの課題と今後の方向性に関する検討会合 報告)(PDF形式:1,762KB)
FinTechビジョン概要(PDF形式:2,043KB)

決済サービス 無料相談はこちら

まとめ

経済産業省のホームページに【60秒解説】というコーナーがあるのをご存知でしょうか?ここでは政策に関連する世界情勢や新聞紙上をにぎわすキーワードについて、スマホでササッと読めるようにまとめられています。このコーナーに2016年7月に投稿された「第4次産業革命 -日本がリードする戦略-」では、インターネットの世界で海外に後れを取っている現状と、巻き返しを図るための方策について述べられています。

今回発表された”FinTechビジョン”の作成に際しては、この「第4次産業革命 -日本がリードする戦略-」で語られた“焦り”にも似た危機感が根底にあるのではないかと筆者は感じています。世界的なFin Techの動向や日本国内のキャッシュレス化の現状、中小企業のIT化の状況といった多面的な分析と考察により、今後の方向性を詳しく説明している”FinTechビジョン”。業種業界を問わず、未来を占う指標の1つとして経営者の皆さんには是非ご一読いただきたい内容です。

<参考>経済産業省:【60秒解説】第4次産業革命 -日本がリードする戦略-

決済サービス 無料相談はこちら