平成29年度「おもてなしプラットフォーム」でこれからの観光はどうなる?

2017年9月29日、経済産業省は平成29年度の「おもてなしプラットフォーム」の実証事業について発表しました。今年度は実施エリアが全国10地域に増え、規模も大きくなっています。訪日観光客の利便性の向上とビッグデータの活用という2本柱が、これからの日本の観光をどう変えるのでしょうか?

「おもてなしプラットフォーム」とは

おもてなしプラットフォーム」は、日本を訪れる外国人旅行者の属性情報や行動履歴といったデータを1か所に集めて、利活用する仕組みのことです。経済産業省の平成28年度補正予算「IoTを活用した新ビジネス創出推進事業(IoT活用おもてなし実証事業)」の一環としてスタートしました。2016年から全国各地でさまざまな実証実験が行われています。

例えば2016年12月~2017年3月に福岡県の川端商店街エリアで行われた「Touch & Pay FUKUOKA」の実証実験では、空港や宿泊施設で訪日外国人旅行者に任意で指紋やパスポート、クレジットカードなどの情報を登録してもらい、宿泊施設のチェックインや買い物の決済を指先ひとつでできるようにしました。

外国人旅行者にとって「おもてなしプラットフォーム」の活用は、チェックインや免税手続きの煩わしさや言葉が通じないストレスを軽減できるメリットがあります。また地域や事業者は、使用言語や過去の訪問履歴といった個人の属性や施行情報をもとに一人ひとりに合わせた観光地案内を提供するなど、データに基づいた利便性の高い新サービスの創出や、ターゲットを明確にした観光戦略の策定が可能になります。

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平成29年度の実証事業

北海道:釧路市ストレスフリーサポート事業

北海道釧路市では、株式会社博報堂プロダクツと一般社団法人釧路観光コンベンション協会等が協働して、スマートフォンアプリを活用した実証を行います。例えば「Spotスタンプラリー」は、誰でも簡単に参加できるスタンプラリー・アプリを利用して多言語観光ガイドを提供し、スタンプを収集しながら周遊してもらおうというもの。スタンプを集めることで景品ももらえます。 アプリは日本語のほか、英語、中国語はもちろん、イタリア語やカンボジア語など12カ国語に対応しており、今後も随時追加される予定です。(2017年7月現在)

他にも「Putmenu」というアプリでお店に行く前にメニューを見て注文ができたり、「Payke」というアプリでバーコードを読み取って、商品情報を多言語表示したりすることで、言語のバリアフリー化に取り組んでいます。

岩手県:三陸おもてなしステーション

東日本大震災の津波で大きな被害に合った三陸エリアは、現在も観光客数が震災前の水準にまでは回復していません。今回は株式会社ガイアックスと三陸鉄道株式会社、公益財団法人さんりく基金等が協働して、androidアプリ「三陸おもてなしステーション」を利用した実証を行います。

このアプリには体験予約サービス「Experience+」やシェアサイクルシステム「COGICOGI」といった機能を搭載しており、体験型観光のマッチングを行います。またスマホにスタンプを押すだけの「モバイル決済」機能でアプリ決済を可能にしたり、ECサイト「三陸まるごと市」やロボット駅員によるおもてなしサービスもあり、旅行の楽しみを拡げる仕掛けがいっぱいです。

東京都:SHIBUYA DIVERSITY PROJECT

渋谷区と東京商工会議所が共同で設立した一般財団法人渋谷区観光協会が2016年4月からスタートさせている観光プロジェクト「PLAY!DIVERSITY SHIBUYA」も実証に参加です。株式会社博報堂等と協働し、スマホアプリ「PLAY! DIVERSITY SHIBUYA」が渋谷区の各エリアに設置された1,000個超のBeaconの電波をキャッチし、現在地周辺の観光情報を多言語で配信します。

また、サイネージアプリ「JOYin SHIBUYA」をインストールしたタブレットを50台渋谷区のエリアに設置し、街の回遊と交流を促進する観光情報を配信するほか、タブレットをバーチャルBeaconとして動作させ、SHIBUYA PUBLIC BEACON NETWORKの一部として利用します。このプロジェクトは一般のサービス事業者にも開放され、街の回遊と交流を促進するアイディアの募集もするとのことです。

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東京都:浅草おもてなしプロジェクト

外国人観光客が多数訪れる浅草では、「浅草おもてなしプロジェクト」がスタートします。このプロジェクトでは株式会社ワイヤレスゲートと六区ブロードウェイ商店街振興組合等が協働して、デジタルサイネージやQRコードを活用した多言語観光情報の提供などの実証を行います。

羽田空港から浅草までの移動は船を利用し、船内で「Touch&Pay」に登録をすることで、買い物が指紋でできるようにしたり、通訳アプリ「LiNGO」による多言語翻訳サービスのほか、観光Webアプリ「EAST TOKYO FUN」とQRコードを活用し、東京都東エリア周辺(羽田空港、東京湾、隅田川、浅草周辺地域)の観光情報、さらには「Fon Free Wi-Fi」による快適な通信環境を提供します。

また浅草エンタメバス 「サムライ&忍者 サファリ」は、日本語と英語によるバイリンガルDJの歌やラップで浅草の観光名所を楽しく巡り、路上に設置された侍と忍者の像が突然動き出す…といったアトラクション感覚のツアーも利用できます。

越前加賀地域:越前加賀ホワイトヒーリングプロジェクト

越前加賀とは福井県勝山市、永平寺町、坂井市、あわら市、石川県加賀市にまたがる地域です。古くから霊峰白山を信仰し、その宗教的な背景を物語る神社仏閣が点在しています。NECソリューションイノベータ株式会社と越前加賀インバウンド推進機構等が協働し、2017年9月20日にリリースされたandroidアプリ「越前加賀ナビゲーション」やバーチャルリアリティ、デジタルサイネージを活用した「スマイルフォトゲーム」など、観光誘客サービスの提供といった実証を行います。

また越前加賀の宿泊施設では、100%電気エネルギーで走行する電気自動車(EVカー)をシェアできる「EVカーシェアサービス」等もスタート。日本の歴史や伝統を肌で感じることができる観光サービスが展開されます。

山陰地域:縁の道~山陰~プラットフォーム

株式会社JTB中国四国と山陰インバウンド機構等が協働し、スマホアプリ「Visit San’in Tourist Pass」による島根県から鳥取県にかけての代表的な観光エリアの情報提供や、スマホ画面を見せるだけでいろいろな施設の利用が可能になる周遊パスの販売を行います。

またスマホアプリ「WaviSaviNavi」で、料理の特徴やアレルギー物質等の説明を多言語で提供したり、指認証決済サービス「LIQUID Pay」でお財布不要の最先端観光が楽しめます。

香川県:高松スマート免税・観光プラットフォーム

2016年の楽天トラベル調べによるインバウンド人気上昇エリアランキング 第1位の香川県。同年の外国人宿泊客は36万人と外国人観光客が急増している地域です。NECネッツエスアイ株式会社と高松丸亀町商店街振興組合等が協働し、「免税手続き」の簡素化と「消費活性化」の解決に取り組みます。

観光アプリ「Turtle Trip」による、アートやうどん、お遍路といった高松の観光案内や商店街の店舗紹介、お得情報などを提供するほか、「モバイル決済機能」「セルフ免税カウンター連携機能」で商店街でのショッピングをスマートにサポートします。商店街ではお遍路ロボットが外国観光客を多言語で『セルフ免税カウンター』に誘導するなど、一歩先行く観光を実現します。

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長崎県:MIRACLE NAGASAKI PROJECT

大型クルーズ船が多数寄港する九州。中でも長崎はハウステンボスで有名で、ロボットが接客する「変なホテル」など観光における先進的な取り組みが盛んです。西日本電信電話株式会社長崎支店と一般社団法人長崎国際観光コンベンション協会等が協働します。

6か国語対応の観光アプリ 「Japan Travel Guide」によるGPSを活用した観光情報の提供したり、プリペイドカードと割引付きの周遊パスをスマホアプリで実現する「Visit Tourist Pass」の利用を進めるほか、長崎大学の学生によるオリジナルデザインのプリペイドカード「JCBプレモカード」を外国人観光客に提供して消費を促します。

アプリによる行動履歴やプリペイドカードの購買データを元に、国別等の購買特性を把握することで、新たな長崎市の活性化を考えるとともに、経済産業省おもてなしプラットフォームとの連携を目指します。

熊本県:負けんばい熊本プロジェクト

2016年の熊本地震で激しい揺れに見舞われ、家屋の崩壊が相次いだ熊本でも実証が行われます。スマホをプリペイドカード化したり、周遊パスにできるスマホアプリ「Japan Local City Card (Kumamoto) 」を活用し、便利でスマートな旅行が楽しめる環境を構築します。ちなみにこのアプリは中国人に人気の支付宝(アリペイ)決済にも対応しています。

日本ユニシス株式会社と株式会社くまもとDMC等が協働し、訪日外国人旅行者の周遊性を高めて地域経済を活性化させるだけでなく、日本人の利便性を向上させる新サービスの創造につなげることを目的に掲げています。

広範地域:Touch&Pay2017

昨年は神奈川や大阪で実施されていた生体認証による本人確認・決済サービス「Touch&Pay」の実証実験が、今年はさらにエリアを拡大し、宮城県や群馬県、三重県、兵庫県などでも行われます。これらは株式会社JTBコーポレートセールスと各地の温泉街を中心とした観光協会等が協働し、指紋で支払えるスマート決済のほか、スマート免税やスマート宅配などの便利で先進的なサービスの実用化に向けた取り組みです。

<参考>Touch&Pay2017
経済産業省:「おもてなしプラットフォーム」の平成29年度実証事業を実施します~インバウンドビジネスにおけるデータ利活用の仕組み構築に向けた実証~

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まとめ

皆さんは2015年11月に観光庁によって「日本版DMO」が定義されたことをご存じでしょうか。DMOとは、Destination Management Organizationの略で、自然や食文化、風習、芸術など、地域の観光資源に精通し、地域と協同して観光地域作りを行う法人のことです。観光庁は「日本版DMO」を、『地域の「稼ぐ力」を引き出すとともに地域への誇りと愛着を醸成する「観光地経営」の視点に立った観光地域づくりの舵取り役として、多様な関係者と協同しながら、明確なコンセプトに基づいた観光地域づくりを実現するための戦略を策定するとともに、戦略を着実に実施するための調整機能を備えた法人』と定めています。

経済産業省による「おもてなしプラットフォーム」構想も「日本版DMO」と密接に結びついており、官民一体となった取り組みが各地で進められています。観光によって世界中からたくさんの観光客を呼び込み、経済の活性化を促すことが地方創生につながる、というのが政府の考えです。

「おもてなしプラットフォーム」の実証においては、スマホアプリの活用が目立ちます。また、キャッシュレス決済 に強い関心があることもうかがえます。国がキャッシュレス化に向けて舵を切ろうとしているのは、おそらく間違いないでしょう。今後、現金しか使えない店舗は淘汰されてしまうのかもしれません。

いずれにせよ、たくさんの観光客が期待される2020年の東京オリンピックでは、オリンピック観戦の前後に日本全国の観光地をめぐっていただき、豊かな自然やアナログとデジタルが融合する独特の文化、そして何よりも日本人の温かい心づかいを肌で感じていただきたいものです。

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