QRコード決済のアンケート調査を検証!日本のキャッシュレス化はどうなる?

2018年夏以降、QRコードとスマホアプリで支払いができるQRコード決済に注目が集まっています。新聞やテレビでも取り上げられ、一部では非常に高い関心が寄せられています。しかし実際に利用している人を街で見かけるケースはあまりないように感じます。

世界的には現金よりもカードやアプリ決済といった支払手段が主流となる傾向にあります。キャッシュレス比率が2割程度の日本は世界の流れに後れを取っている状態です。地域経済活性化のために進められている訪日外国人誘致に際しては、現金しか使えない店が多くて困るという外国人の不満の声も聞かれます。

クレジットカードや電子マネーに比べると、店舗への導入コストが安く済むことから、QRコード決済は日本のキャッシュレス化に寄与することが期待されています。しかしおサイフケータイやApple Payがありながらも現金を使う人が圧倒的に多い日本で、本当に普及するのでしょうか?今回はモバイル決済の現状とQRコード決済の将来性について検証します。

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トーマツが行った調査

有限責任監査法人トーマツは2017年10月に「QRコード決済・モバイル決済の利用実態と今後の利用意向に関する調査」を行い、その結果を公表しています。トーマツは報告の中で「QRコード決済は、今後認知が広がることで利用者が極めて高いリピート率で決済手段として選択することが予想され、キャッシュレス化推進の鍵となり得えます」としています。

調査の概要

■ 調査目的
10代~30代一般個人のモバイル決済およびQRコード決済に対する認知・利用実態や、
QRコード決済の今後の利用意向を把握することで、キャッシュレス化進展の考察検討の基礎資料とする
■ 調査手法
インターネットモニターを活用した定量調査
■ 調査対象者
以下の条件を満たす10代~30代一般個人男女 1,800名
 スマートフォン保有者
 スマートフォンでのアプリ利用経験者
■ 調査対象地域
日本全国
■ 調査実施時期
2017年10月12日~15日
■ 主な調査項目
• モバイル決済の認知、利用経験、利用サービス、利用場所、利用満足度
• QRコード決済の認知、利用経験、利用サービス、利用満足度
• QRコード決済の説明文提示後の興味関心度、魅力度、魅力ポイント、利用意向度
• QRコード決済利用意向者の想定利用場所 等

モバイル決済

モバイル決済の認知率

10代~30代の男女にモバイル決済を知っているか聞いたところ、7割を超える人が「知っている」と答えた

おサイフケータイやApple Payのようにスマホに搭載された非接触ICやスマホアプリによる決済手段を『モバイル決済』と呼ぶことがあります。この「モバイル決済を知っているか」という質問に対し、全体の72.4%が「知っている」と回答しています。性別・年代別で見ても6割以上の人に認知されていることがわかります。

モバイル決済の利用経験率

モバイル決済を使ったことがある人は全体の4分の1に留まる

ところが、「モバイル決済を使ったことがあるか」という質問について、「使ったことがある」と答えたのは全体の25.4%に留まっています。

モバイル決済を認知している人だけで集計しても全体の3分の1しか利用経験がない「モバイル決済を知っている」と答えた人に限って集計してみても、実際に利用経験がある人は全体の3分の1程度です。

モバイル決済の満足度

モバイル決済利用経験者の8割以上が「満足だ」と回答している

モバイル決済の利用経験者に満足度を尋ねる設問では、「満足している」「まあ満足している」と言う回答が全体の86.5%を占めています。利用経験がある人は概ね好意的にモバイル決済を受け止めているようです。

モバイル決済に不満足と答えた理由は「使える場所」「利便性」「セキュリティの不安」が多い

モバイル決済に不満を感じている人にその理由を聞いたところ、「使える場所が少ないこと」や「利便性やお得感に対する不満」、さらには「セキュリティの不安」が挙がっています。同調査ではモバイル決済を利用したことがある場所についても質問しています。利用場所として圧倒的だったのは「コンビニ」でした。次いで「食品スーパー」「自販機」「ドラッグストア」「電車やバスの利用時」と続きますが、いずれもコンビニには遠く及ばない結果となっています。

QRコード決済

QRコード決済の利用経験率

QRコード決済を知っている人は全体の1割程度。ただし利用経験者の9割が「満足している」と答えている

QRコード決済に目を移してみると、調査対象となった1,800名のうち「QRコード決済を利用したことがある」人は183名、全体の1割程度でした。しかし利用経験者の9割がサービスに満足していると答えています。また利用経験がない人の半数は「利用したいと思う」と回答していることから、一定の関心を集めていることがわかります。

QRコード決済の魅力

QRコード決済の魅力は「スマホで決済ができ」「スピーディ」であること

「QRコード決済の利用経験はないが使ってみたい」と回答した人に、QRコード決済の説明文を読んでもらい、魅力的だと感じた部分を調査したところ、「現金やカードがなくてもスマホで支払いができる」ことや「簡単でスピーディ」である点に回答が多く集まっています。割合は少ないものの「利用履歴が残ること」や「セキュリティの安心感」も一定の評価を得られているようです。

<参考>
有限責任監査法人トーマツ:QRコード決済・モバイル決済の利用実態と今後の利用意向に関する調査<調査結果報告資料>

キャッシュレスのメリット

不正利用の被害で補償が受けられる

日本では治安の良さや高度な偽造防止技術のおかげで、現在も現金払いが主流です。しかし現金の性格上、いちいち名前を書いたりして所有権を明示することはできません。そのため盗難に遭った場合、取り戻すのは至難の業です。

ところがクレジットカードが不正に利用された場合、一定の条件を満たせば補償が受けられます。プリペイド式の電子マネーには補償がないケースが多いですが、LINE Payのように10万円までの補償を謳っているものは存在します。

クレジットカードや電子マネーといったキャッシュレス決済を利用すると、自動的に利用履歴が残ります。お金の出入りが記録されるので、こまめにチェックしていれば不正に使用された場合にも気付きやすく、その記録がそのまま不正利用の証拠になります。事実、スマホを紛失したために「楽天Edy」を不正利用された男性が、運営会社の楽天Edy(東京・世田谷)などに損害賠償を求めていた裁判では、東京高裁が楽天Edyに約224万円の支払いを命じる判決を出しています。

<参考>
日経スタイル:スマホを紛失 電子マネー、思わぬ多額な不正利用も

国の仕組みやビジネスに変革をもたらす力に

エストニアの例

電子国家と称されるエストニアでは、国民一人ひとりに付与されたIDと銀行口座が紐づけられており、お金の動きが全て記録されるようになっています。そのため自動的に家計簿を作成することができ、自動的に納税が行われています。確定申告のような手続きを必要としないため、個人向けの税理士の仕事はほぼなくなってしまったそうです。国家は確実に税金を集めることができ、脱税のリスクを回避しています。

現金ならではのリスクを回避

日本では紙幣を作るために毎年1.4兆円の予算が割かれてます。現金の利用率が減れば、新たに貨幣を作る費用を減らすことができます。現状、多くの店舗は売上を口座に預けるために多額の現金を持って銀行に出向いています。キャッシュレス化すればお店で扱う現金が減り、決済代行業者から銀行口座に振り込まれるので強盗に遭うリスクも減らせます。

データの利活用に期待も

お金が電子化すると売買記録が残ります。これをビッグデータとして利用すれば、小売業をはじめとする流通業界の業務改善につながることが期待されています。ネット通販ではユーザーの購買データなどをもとに、一人ひとりに商品をレコメンドすることで売上を増加させるといった実績を上げています。この仕組みを店舗にも展開することで、消費者の利便性を高めるとともに経済が活性化する可能性があるのです。既に経済産業省を中心に産学官が協力し、電子レシートの活用や情報銀行構想など、データの利活用について研究や実証実験などの取り組みを進めています。

<参考>
MD NEXT:経済産業省 商務情報政策局 商務・サービスグループ 林揚哲氏 ロングインタビュー データの利活用が小売業変革の鍵になる

クレジットカードとモバイル決済の違い

お店でクレジットカード払いを受付ける際には、カードの磁気ストライプを読み取るケースが多いのが現状です。日本国内では減少傾向にあったクレジットカードの不正利用が2012年以降増加に転じており、特にスキミングの被害が問題になっています。

国は改正割賦販売法を施行し、2020年までにICカードに対応したカードリーダーへの移行を完了させようとしています。しかしユーザーがクレジットカードを紛失した場合、カードに記載されている情報を使えばネット通販などで決済を行うことができるため、セキュリティ面に不安があると言わざるを得ません。

おサイフケータイやApple Payといったスマホの非接触ICを利用する場合には、暗証番号の入力や指紋認証などにより、簡単に第三者が利用しにくい仕組みが構築できます。ただしモバイルSuicaのように、乗り物の乗車券として使う際の利便性が優先され、認証なしで使えるものもあり、万全とも言えません。

QRコード決済がカードよりも優れている理由

強固なセキュリティが設定できる

QRコード決済はあらかじめアプリに登録した情報をQRコードに変換して表示します。もしQRコードを盗み見られても、カード番号などの情報を読み取ることはできません。アプリによっては決済用のQRコードを表示する際に再度認証を求めるものがあり、スマホ本体の認証と組み合わせれば二重にセキュリティをかけることができます。

店舗の導入コストが抑えられる

導入する店舗にとっては、クレジットカードや電子マネーのように高額な機器をいくつも用意する必要がなく、汎用性の高いスマホやタブレットがあればQRコード決済を導入できる点にメリットがあります。QRコード決済とあわせてPOSレジアプリや在庫管理システムを導入すれば、1台のモバイル端末でさまざまな業務を管理できます。クラウド型のシステムなら、外出先でもデータのチェックが可能です。

普及のためにしのぎを削る各社

日本でクレジットカードが普及していない理由には、導入コストの他にもシステム利用料や決済手数料といった費用があります。これらの経費がかさむことで現金よりも利益が目減りしてしまいます。またキャッシュレス決済を導入すると販売から売上の入金までにタイムラグが発生し、黒字倒産のリスクを負うことにもなります。そのため特に資金力の乏しい小規模店舗にキャッシュレス決済が倦厭されてしまうのです。

現在LINEはQRコード決済に限り、店舗に課せられる決済手数料を当面無料にすることを公表しています。ユーザー向けには大幅なポイント還元率の引き上げを行い、利用者の獲得にも乗り出しています。

Origami Payやd払いも割引クーポンの配布などでユーザーへの訴求を行っています。2018年秋を目途にヤフーとソフトバンクは新QRコード決済サービス「PayPay」の開始を予定しており、今後も各社が認知度の向上と利用者獲得に向けてアピール合戦を繰り広げることが予想されます。

まとめ

トーマツの調査によると、QRコード決済の利用者はまだまだ少ないことがわかります。しかし利用したことがある人の9割が「満足している」と答えています。中国では2年程度で決済全体の6割がアリペイとWechat Payに移行しており、今やキャッシュレス先進国として世界中の注目を集めるほどに成長していることから、日本でもQRコード決済の普及が期待されています。

しかし欧米のようにクレジットカードやデビットカードが良く使われるの国からの訪日観光客に、QRコード決済で対応するのは困難です。現状では外国人にQRコード決済アプリをダウンロードして、クレジットカードの登録をしてもらうのは難しいと思います。訪日外国人の多いエリアでは楽天ペイやAirペイのようなマルチ決済サービスの需要が高まるかもしれません。

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