近未来型スマートストア【トライアル】が踏み出した“はじめの一歩”とは?

こんにちは、ピピッとチョイス編集部です。近年は欧米だけでなく、アジアでもキャッシュレス社会に移行する流れが強くなっています。日本は通貨の信頼性が高いことから、現金決済が主流となっていますが、その一方で各社さまざまなキャッシュレス化への取り組みも進めています。

2018年2月14日、福岡市にオープンした『トライアル アイランドシティ店』は、タブレット決済機能付きのレジカートを導入し、プリペイドカードを利用してキャッシュレスな買い物ができる画期的な店舗です。日本初のスマートストアとしても注目を集めています。

今回はこの『トライアル アイランドシティ店』にお邪魔して、決済の仕組みや開発秘話をうかがってきました。お話いただいたのは、トライアルグループ全体のバックオフィスやオペレーション周りを統括するトライアル・シェアードサービス・代表取締役社長の矢野博幸さんと、トライアルの新たな決済の仕組みを作っているトライアルフィナンシャルサービス・執行役員の松重広一さんです。

一歩先行くトライアルの挑戦

福岡に本社を置くトライアルは『流通情報革命』をスローガンに、テクノロジーによる流通変革を目指している会社です。食品や日用雑貨のみならず、医薬品や家電といった幅広い品揃えのスーパーセンターを全国に展開しています。

今回出店した『トライアル アイランドシティ店』はパナソニックなどと協力し、商品動向やお客様の動きを分析できるシステムや、セルフレジ機能を搭載したショッピングカートでレジ待ちを解消する仕組みなど、近未来的なお店を実現しています。

「トライアルはもともと流通・小売業のソフトウェア開発からスタートした会社で、小売を専業とする会社とは異なる視点でものを見る文化が根づいている」とおっしゃる矢野社長。現場で店長を経験した社員が異動して、店舗で使用するシステムの開発に携わることも多いそうです。現場を知っている人が開発するので、ミスマッチが起こりにくいというメリットがあります。

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アイランドシティ店でスマートストアを体験!

(1)プリペイドカードを作る

キャッシュレスに買い物をするためには、トライアル各店舗で利用できるプリペイドカードが必要です。『アイランドシティ店』の入り口には入会コーナーが設置されており、その場でカードを発行してもらうことができます。

従来の入会手続きは申込用紙に住所や名前などを記入しなければなりませんでしたが、トライアルではタブレットを利用して情報を入力します。郵便番号から町名までの住所が自動で表示されるので、入力するのは番地や建物名程度。発行にかかる時間はせいぜい5分くらいです。カードを入手した後は、チャージ専用機から1,000円単位で入金し、準備完了です。

(2)タブレット付カートでお買い物開始

▲タブレット下部の赤いところがスキャナになっていて、商品バーコードをかざすとタブレットに情報が反映される。

入り口にはタブレット端末がついたショッピングカートが並べられており、自由に使うことができます。キャッシュレスに買い物をする場合はこのカートを使うと便利です。買い物を始める前に、タブレットの下部に設置されたスキャナにプリペイドカード裏面のバーコードをかざし、同じく裏面のPINコードを入力してログインします。すると画面右上にプリペイドカードの残高が表示されます。

ログインできたら、買い物スタートです。欲しい商品を見つけたら、スキャナにバーコードをかざしてカートに入れていきます。商品をスキャンすると、タブレット画面に商品名と金額、さらにはカートの中に入っている品目数や合計金額も表示されます。プリペイドカードにチャージする現金をその日の買い物予算にすれば、買いすぎの抑制も可能です。

カートに入れてみたけれど、やっぱりこの商品はいらないと思ったら、もう一度商品バーコードをかざすことでキャンセルされます。キャンセル履歴もタブレットに残るので、カートで商品がいっぱいになった後でも何をやめたのかがチェックできます。タブレットには関連商品やクーポンも表示されるので、買い忘れ防止にも役立ちます。

(3)レジカート専用レーンを通ってお買い物完了!

▲レジカート専用レーンの様子。処理がわからなくても店員さんが丁寧に教えてくれるので安心。

欲しいものをカートに入れ終えたら、レジカート専用レーンに移動します。そこでカートのバーコードを読み取って決済処理の操作をすると、プリペイドカードの残高から代金が差し引かれ、レシートが発行されます。店員さんがカゴの商品をレジに打ちこむ作業がないので短時間で会計ができ、支払った代金に応じてポイントがつくのでお得です。

マイカゴを持参すれば、袋詰めをせずに駐車場までカートを押していくことが可能です。レジ袋が必要ないので環境にも優しく、時間や手間を省くことができます。なお、トライアルで3回ほど買い物をするとマイカゴのプレゼントサービスが受けられるので、是非活用したいところです。

現金払いはスタッフがいるセミセルフレジで

▲もちろん見慣れた有人レジもあるので、現金での買い物もOK。

『アイランドシティ店』の入り口には数名のスタッフが常駐しており、プリペイドカードの発行やレジカートの使い方について案内をしています。この日もレジカートは初めてという人が、タブレットの使い方や決済方法についてレクチャーを受ける姿が見られました。店内のお客様のおよそ半数がレジカートを使って買い物をしていましたが、慣れた手つきで操作をしている人の方が多い印象です。

『アイランドシティ店』にはレジカート専用レーンのほか、セルフレジとセミセルフレジが用意されています。セルフレジに設置されているのはレジカートと同じタブレットで、プリペイドカードでの支払いにのみ対応しています。セミセルフレジは店員さんに商品のスキャンをしてもらい、レジ前方の機械で代金を支払います。こちらは現金とプリペイドカード両方に対応しているので、従来通り現金で支払いたいお客様はセミセルフレジを利用していました。

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キャッシュレス化の波に日本が乗り遅れる理由

▲左から松重役員と矢野社長。実現したい構想がまだまだ沢山あるそうです。

欧米では以前から小切手やクレジットカードによる支払いが主流でした。近年は中国のスマホ決済が注目を集めています。日本では15年ほど前から電子マネーが登場し、おサイフケータイやApple Payも利用できるようになっていますが、相変わらず現金払いが主流です。

矢野社長は「店舗運営やサービス向上など、いろいろな課題について突き詰めていくと、結局行きつく先はキャッシュレスなんです。でも日本ではまだまだ現金が幅を利かせている。これは日本の通貨に施された偽造防止技術の高さが理由と言われます。でも実際は、キャッシュレスの利便性を体験していない人が非常に多いことが一番の原因だ、と私たちは考えているんです」とおっしゃいます。

キャッシュレス化への第一歩は、たくさんの人に現金不要で便利な買い物を体験してもらうこと。『アイランドシティ店』はそのために作られたお店なのだそうです。

たくさんの人にキャッシュレス体験を届けるために

▲セルフレジコーナーは最近レイアウトを変更。非常にコンパクトなので圧迫感がない。

『アイランドシティ店』にはレジカート専用レーンのほかに、セルフレジとセミセルフレジがありますが、現金が使えるのはセミセルフレジだけです。ここにもキャッシュレスを普及させるための工夫があります。

「うちのセルフレジはすごくコンパクト。でもその分ちょっと不親切なんです。(笑)」と少年のように語るのは松重役員。「普通のセルフレジは現金チャージができるようになっていますよね?でもうちのにはその機能がないんです。」つまり、カード残高が足りない時は、セルフレジコーナー入口のチャージ機に戻らなければ入金できないというのです。

松重役員は続けます。「これにはちゃんと理由があります。短時間で会計できるのがプリペイドカードのメリットなのに、ここでチャージできるようにするとどうなります?わざわざ現金を取り出して、一度カードに入金して、それからカードで支払う人が増えてしまう。……だったら最初から現金で払った方が良くないですか?」

「便利だと思っていたことが実は不便」という発見

▲セルフレジコーナー手前にはチャージ専用機が設置されている。

言われてみればその通り。便利に使うためのカードなのに、目の前の現金をわざわざカードにチャージすることで、かえって作業を増やすことになっています。……でも『これじゃあ不便だ!』というクレームが出たりしませんか?

「そういう方は現金OKのセミセルフレジを利用していただけば良いんです。なにも無理してセルフレジを使うことはありません。残高不足で不便な経験をした人の中には、次からは事前にチャージしておこうと思う人も出てくるでしょう。また、セルフレジのタブレットはレジカートと同じものなので、操作の仕方は一緒です。どうせなら店内を回っている間にスキャンした方がいい、と考える人も徐々に増えていくのではないでしょうか?」

確かに人によって価値観は違いますし、何が快適なのかは人それぞれ。不便な体験を通じて、お客様一人ひとりに最適な会計スタイルへ誘導されていく仕組みが、ここにあるということですね。なんという聡明さ!恐れ入りました!

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トライアルが目指す未来の店舗像

▲スーパーセンターならではの陳列。

オープン直後は非常に多くのお客様でにぎわった『トライアル アイランドシティ店』。平日の昼下がりでも途切れることなくお客様が来店しています。レジカートの運用がスタートしてから1週間くらいなのに、戸惑っている様子のお客様はほとんどいません。

「最初は非常に混乱しましたし、想定外のトラブルもありました。でも2回目以降は違和感なくお買い物されている方が多いです。」と矢野社長。やはり初めて使うときのハードルが一番高いようです。

店内には約700台のカメラが設置され、来店したお客様の数をチェックしたり、陳列棚の商品の状況をモニタリングしたりして、売れ筋商品の分析などが行われています。一部の棚は商品ラベルが電子化されており、広告として活用することも可能です。

矢野社長は「今までメーカーは製品開発のためにたくさんのコストを費やしてきました。しかしここで集めたデータを活用すれば、開発コストを抑えることができる。その結果、私たちは安く仕入れることができ、お客様にも還元できるようになります」とおっしゃいます。メーカーと消費者の関係をトライアルが上手に取り持つことで、みんなが笑顔になれる仕組みを作ることができるというわけですね。

近い将来、日本版amazon goが登場する!?

▲お店の仕組みに改革をもたらすレジカート。

「今はまだ、スタートラインに立った状態。これから少しずつ改善を進めて完成形に近づけていく」とおっしゃる矢野社長と松重役員。タブレット上で商品の場所を案内したり、人を介さずに魚の3枚下ろしが注文できたり、これから実用化を控えている構想がたくさんあるのだそうです。

目指しているお店の姿について伺ったところ、最終的には店舗の無人化が目標とのことでした。既に電子タグ(RFID)を利用したウォークスルー型会計システムを開発し、2018年2月19日からトライアル本社で実証実験を開始しているそうです。

電子タグはユニクロで既に導入されており、セルフレジの台に商品を乗せるだけで商品情報が読み取れるため、会計時間が短縮できるというものです。現在はタグのコストが高いこともさることながら、ラベル印刷で対応できるバーコードと異なり、商品1つひとつにタグを付ける作業の負担もネックになっていると言われています。

今回の実証実験が上手くいけば、同社が運営する小型店舗への導入が検討されているとのこと。個人的には通勤時間帯に混雑するの駅のコンビニにウォークスルー型会計が導入されれば、多くの人に喜ばれるのではないでしょうか?

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まとめ

駅の改札には駅員さんがいて、カンカン言わせながら切符にハサミを入れていた数十年前、ICカードをかざすだけで通過できる自動改札の登場は衝撃的なものでした。今、その時と同じような変革が、身近なお店に起こりつつあります。

実際にその場に足を踏み入れてみると、いつも行くお店とは少し様子が異なるので、最初は戸惑いました。でもレジカートにバーコードをスキャンする作業はエンターテイメント性があり、とても楽しい体験でした。

大量に商品が並ぶ店内で、近未来の体験できる――わざわざ遊園地に行かなくても、トライアルに行けば買い物が特別なイベントになってしまうのです。このワクワク感が味わえるのは、今は福岡の『アイランドシティ店』だけです。もしかしたら数ヵ月後には、一大観光スポットになっているかもしれませんね。